住まいを担保とするローン商品を高齢者向けに取り扱う銀行が増えている。

家をリフォームしたり、住みかえたりするための資金を融資する商品だ。

住まいの担保価値が高ければ収入の少ない高齢者でも借り入れが可能になる。

その一方で、ローン返済負担を将来、子供らが引き継ぐ可能性があり、家族を含めて理解をしておくべき点も多い。

 

地銀を中心に取り扱いが増えているのが、住宅金融支援機構の保険を活用したローンだ。

基本的な枠組みはどの銀行でも同じだ(図)。

家の建て替えや住み替え、リフォームなどをしたい60歳以上の人を対象に、土地・建物を担保に融資する。

 

特徴は返済方法にある。

元金を返済するのは借り手本人ではなく、将来亡くなった後にその家を相続する子供ら。

家を売却するなどして一括返済する仕組みだ。

自分の死後、家はもうなくてもよいと考える高齢層の利用を想定する。

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相続人がローンを返済できないリスクに備え、銀行は住宅金融支援機構が提供する保険に入る。

同機構によると、活用ローンを扱う銀行は現在13.

資金使途の範囲を2011年に広げ、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の入居一時金なども含めたことで取扱銀行が増えた。

 

15年12月にりそな銀行と埼玉りそな銀行が始めた「安心革命」も活用商品の一つ。

「不動産会社を通じた問い合わせが多い」(りそな銀行コンシュマービジネス部担当マネージャーの奥原浩氏)。

 

今年の4月には足利銀行とトマト銀行が取り扱いを開始。

収入が公的年金に限られ通常の住宅ローンは組めないという高齢者でも、担保物件などの条件を満たして審査に通れば利用は可能になるという。

 

一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)の制度を活用したローン商品も同様に、取り扱う銀行が増えている。

15年4月に大正銀行、10月に北海道銀行が導入し、現在は8行が扱う。

 

こちらの商品の特徴は担保の種類。

家を誰かに貸すことによって得られる見込みの賃料収入の権利を銀行はまず担保にとる。

借り手は賃料収入を元手としてローンを返済していく。

 

家はJITが借り上げて第三者に賃貸し、その収入から諸経費を除いてオーナーに戻す。

「今住む家から退去して高齢者向け住宅に移り住みたい」といった需要を見込む。

資金使途の制限が緩やかなのでたとえば余裕のある暮らしのための生活費に充てられる。

 

高齢者を対象にしたローンは「安定した収入の少ない人でも利用しやすい」(ファイナンシャルプランナーの中村宏氏)半面、注意点も多い。

 

まず大切なのは完済までの流れを家族にも理解してもらうこと。

借りた本人が亡くなった後、返済を遺族が担うことがあるからだ。

妻が連帯債務者となるケースもある。

実際、理解を得るために、法定相続人への説明を前提とする銀行もある。

 

住宅を担保にした融資では将来、市況の悪化で担保価値は大幅に下がると、家を売っただけでは返済しきれず、追加負担を求められる可能性がある。

保険料・手数料負担に伴い、通常の住宅ローンよりも金利が高めである点も知っておきたい。

 

 

日本経済新聞(藤井良憲氏):平成28年4月23日(土)付け