空き家の適正管理を所有者に求める空き家対策特別措置法などに基づき、所有者への勧告や建物の強制撤去に踏み切る自治体が増えている。人口減少や相続放棄で居住者不在の物件は増える一方。空き家情報を集約して買い手を広く募る試みも進むが、課題も多い。
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 「ざっと見積もっても区内に1000戸以上はありそう」。東京都世田谷区の担当者はこう明かす。人気住宅地の同区でも近年、空き家は急増。2015年の特措法施行を受け、空き家から道路にはみ出て通行に支障がある樹木を区が伐採できるなどとした条例も定めた。今年度は本格的に空き家の実態を調査する。

 総務省の住宅・土地統計調査では全国の空き家は13年に820万戸。うち別荘や売却用住宅などを除く「その他の住宅」は318万戸で、多くが居住者不在で放置されているとみられ、野村総合研究所は33年に785万戸になると予測する。

 地方では早くから空き家問題が深刻だったが、「(自治体権限などの)法的根拠が明確でなく、抜本的な対策を打てなかった」(佐賀県武雄市の樋渡啓祐前市長)。倒壊の危険があっても強制的に解体すれば所有者の財産権を侵害しかねない。空き家も固定資産税の住宅用地特例が適用され、納税額は6分の1(200平方メートル以下の場合)で済むため、売却するメリットも乏しかった。

 特措法は、景観を含め周囲に悪影響を与えるものを「特定空き家」と定義。自治体は所有者に是正を指導し、従わなければ勧告を出して固定資産税の優遇特例を解除できる。16年度の勧告は全国で210件と前年度の4倍近くに増加。「税負担増は空き家放置の抑止力になりつつある」(富士通総研の米山秀隆主席研究員)面もある。法定の空き家対策計画を作る自治体は「今年度末までに約900と全体の5割を超えそう」(国土交通省住宅総合整備課)だ。

 国交省の有識者会合は6月、特措法を踏まえた空き家の具体的な活用策を提言した。その一つが全国規模で買い手を募る「空き家バンク」の創設だ。不動産情報サイトを運営するLIFULLは今秋、各自治体が個別に提供する空き家情報を統合し、一括検索できる仲介サイトを立ち上げる。浜松市など70以上の自治体が関心を示している。

 来春には改正宅地建物取引業法が施行され、仲介業者には依頼者の意向に応じ、建物の老化や不具合の調査をあっせんすることなどが義務づけられる。熊谷則一弁護士は「建物の欠陥など買い手の不安を和らげ、空き家売買を後押しする可能性がある」と話す。

 地図大手のゼンリンは調査員が収集する空き家情報の外販を強化している。「空き家対策に乗り出す自治体や、近く売りに出されそうな物件情報を知りたい不動産業者の需要も多い」という。

 もっとも、立地条件が悪く買い手が付かない空き家も多い。相続放棄などで所有者が不明の空き家も自治体を悩ます。

 所有者不明の場合、特措法は略式代執行と呼ぶ手続きで自治体が解体できるとする。一方、世田谷区や埼玉県川口市は民法の規定を使い、裁判所が選んだ財産管理人に解体や売却を委ねた。ただ「いずれも物件売却で解体費などを賄えないと自治体の費用負担になる。どこまで市民の理解を得られるか不透明」と川口市の担当者は話す。

 それでも対策を急ぐ必要から、広島県呉市などは解体費用を一部助成している。今後、国や自治体の財政を大きく圧迫しかねず「住宅購入者に将来想定される解体コストを負担してもらう仕組みも検討課題」(富士通総研の米山氏)との指摘もある。

2017/8/14付
日本経済新聞 朝刊

(伊藤正倫氏)