19年度与党税制改正大綱を決定し記者会見する自民税調の宮沢会長(右)と公明税調の西田会長(14日午後、東京・永田町)
与党が14日決定した2019年度の税制改正大綱は、19年10月に控える消費増税への対策に腐心するなか、自動車関連の税体系について「保有」から「利用」へと中期的な改革をめざす方針を打ち出した。ただ具体像は今後の議論に委ねられた。デジタル経済の浸透や急速な少子高齢化への対応も出遅れたままとなり、20年度改正以降の宿題が山積している。

今回の税制改正で、最も関係者の議論が白熱したのが自動車税制の減税だ。車の保有や取得などにかかる税負担を単年度で計530億円減らすだけでなく、与党の税制調査会は抜本的な税体系の見直しを中期的な課題と明確に位置づけた。

だが改革は簡単ではない。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は14日の記者会見で「相当難しい話だろうと個人的には思っている」と話した。


現在の自動車税制は購入や保有の各段階に課税し、排気量で税負担が分かれるのが基本だ。シェア経済の拡大などで「保有」から「利用」への流れが加速し、脱ガソリン車の動きも広がる。このままでは課税対象は細り、税収も減る。税当局にとっても、走行距離など「利用」に着目した税制が望ましくみえる。

ただ、走行距離を精緻に把握するには全地球測位システム(GPS)を車につける必要があり、プライバシー保護の問題を指摘する声は多い。メーターの数値から税額をはじくとしても、偽装を防ぐことが課題となる。

税負担の構造も変わる。「車が移動手段の中心である地方在住者ほど負担が大きくなりかねない」(自民税調幹部)ほか、運送業者など車を仕事に使う人や企業は増税になる恐れがある。自動車大手幹部は「税体系を抜本改革するには、年末の税制改正議論だけでは不十分だ」と指摘する。

IT(情報技術)の進化に伴い、世界で経済や社会の環境変化が広がる。現在、先進国も新興国も関心を強めているのは、デジタル課税だ。米グーグルやフェイスブックのように、工場も営業所もないのに、世界中で利益を生み出せる企業が登場。これまでの物理的な拠点に集まる所得に着目した課税ルールは機能不全に陥りつつある。

20カ国・地域(G20)では従来の国際課税のルールを見直そうという機運が高まっている。特に欧州連合(EU)各国が先行し、サービスの利用者数や契約数、国別の売上高などに着目した新たな課税方式「デジタル法人税」を創設できないか、急ピッチで議論を進めている。英国など一部の国はその議論すら待てずに独自課税に動く。

日本の対応の遅れを懸念する声は国内でも強い。今回の与党税制改正大綱ではデジタル企業に対し「適正な課税を確保するための方策」を検討課題とした。しかし議論そのものはほぼ素通り。何を基準に、どう税をかけ、誰が負担するか。税体系の再設計が問われるが、日本では新しい経済や社会の姿に合わせた税制をめぐる議論は尽くされているとは言いがたい。

少子高齢化や働き方の多様化など、社会構造の変化への対応も不十分だ。退職金課税を例にとっても、現行制度では20年超勤めるかどうかで控除額に大きな差がつく。宮沢氏は今夏の時点では見直しに意欲を示したが、20年度以降に持ち越した。「人生100年時代」を生きるための自助努力を後押しする税制もいまだ整っていない。

19年度税制改正をめぐる議論は、消費税率を10%に引き上げることを優先した結果、その対策づくりに追われた。もっとも、消費税率を10%に上げても財政健全化にはほど遠く、膨張を続ける社会保障費の抑制も避けられない。「消費税率10%の先」を描く議論も避けて通れない。

2018年12月15日  日本経済新聞社より