2019年は家計を取り巻く環境が大きく変わる。10月に消費税率の8%から10%への引き上げが予定され、増税対策として住宅ローン減税が拡充される。株価の波乱が続けば資産運用でさらなる対応が求められそうだ。相場の見通しを含め、家計への処方箋を4人の専門家に聞いた。



【消費増税 購入時期の工夫を】
辻・本郷税理士法人 浅野恵理氏(税理士)

消費税率の引き上げは家計の収支に大きく影響する。19年は8%から10%への移行期なので、契約や購入のタイミングによっては増税後に利用する商品やサービスでも8%で済むケースがある。スケジュールを確認し、計画的に行動することが大切だ。

まず、19年3月31日までに契約する注文住宅や披露宴などの代金には、住宅の引き渡しや披露宴の日程が10月以降でも、8%が適用される。ただし、4月以降に披露宴の人数が増えたり追加工事を発注したりすると、その分には10%になる。4月以降に変更が出ないよう注意したい。

また、電車、バス、船舶、飛行機などの旅客運賃や映画、音楽、スポーツ、美術館などの入場料については9月30日までに支払えば、サービスを利用するのが10月以降でも8%で済む。6カ月定期券や遊園地の年間パスなどは9月末までに購入する方が有利だ。

増税後も酒類を除く飲食料品や一定の新聞には軽減税率が適用され、8%に据え置かれる。飲食料品については消費者が混乱する場面があるかもしれない。

例えば、出前やテークアウトの食品は8%だが、同じものを店で食べると外食になるため10%になる。みりんとみりん風調味料、発泡酒とノンアルコールビールなど、似たような商品でも税率が異なる。

増税後の消費の落ち込みを防ぐため、10月以降、値下げやポイント還元なども行われる予定だ。少しでも家計の負担を減らすためには情報収集も重要になりそうだ。



【住宅 中古は値下がりも】
さくら事務所会長 長嶋修氏(不動産コンサルタント)

消費増税は住宅市況に大きな影響を与えないだろう。

住宅ローン減税の期間が現行の10年から13年に延長されるほか、一定額以下の収入の人に一時金を渡す「すまい給付金」の年収要件が緩和され金額も拡充が検討されている。借入額や収入によっては、増税前の8%よりも増税後の10%で購入したほうが減税や給付金の効果で得をする人もいるだろう。このため、住宅を駆け込みで購入する動きや、その後の反動減は限定的だとみている。

新築は都心のマンションで需要に息切れはあるものの、デベロッパーが価格の維持を狙って発売戸数を減らしてくる可能性が高いと思われる。

一方、中古マンションについては、株価動向を注視することが必要だ。東京都心3区(千代田、中央、港)の中古マンション価格は日経平均株価と一定の時間差で連動する。都心の高額な中古マンションを購入する高所得層は株式への投資比率が高く、株価の下落傾向が続けば需要が減って、19年春ごろの値崩れもあり得る。結果的に、新築と中古の価格差が広がる1年となるかもしれない。

今まで以上に資産価値が落ちにくい物件を選ぶ姿勢が大切になってくる。都心、郊外とも駅前、駅チカなど利便性の高いエリアの住宅は価値を保ちやすいのが一般的だ。

すでに住宅ローン金利の水準は低く、一段の低下余地は狭い。先行きの上昇リスクを考慮すれば、変動型より固定型を選ぶほうが無難だといえる。



【資産運用 AI関連に注目】
第一生命経済研究所取締役・首席エコノミスト 嶌峰義清氏


18年度の企業業績は前年度比の増益率が縮まり、19年度は減益となる企業も多いだろう。足元の国内景気のけん引役は設備投資のみだ。世界的な景気の減速や米中貿易戦争の影響などで輸出の伸びは今後も期待できない。

企業は期初に業績を慎重に予想する傾向がある。19年度は業績拡大への期待は弱まり株価の割安感も薄まるだろう。株価は下値を探る展開を予想する。

企業業績の下振れが予想されるが、長期にわたる需要拡大が期待できる業種を選んで投資すれば恩恵を受けられる可能性がある。例えば、人工知能(AI)やビッグデータなどに関連する企業だ。

ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が悪化する懸念がある場合は、国債や格付けの高い社債など、安定的に収益をあげられる資産に資金を移しておきたい。



【株式比率を見直し】
ファイナンシャルプランナー 深野康彦氏

今回の株式相場の急落で肝を冷やした人は、運用資産に占める株式の割合を引き下げたり、毎月の収入から投資に充てる金額を減らしたりすることを検討したい。

投資で被る損失が許容できる範囲を超えていると想定されるからだ。「休むも相場」という格言があるように、投資を手控えて相場を見つめ直すことも頭に入れておきたい。

19年も重要イベントが控えており、株価が急落する局面は予想される。相場全体が下落した結果、投資しやすい水準になって、どの銘柄を買うか迷ってしまう人もいるだろう。

開示済みの業績を通期の業績予想と比べて進捗率などを確認したり来期以降の市場の業績予想などを見比べたりして、長期的に業績拡大が期待できる銘柄を探したい。相場全体が下落したときは、株主優待狙いの銘柄が割安になっていないか、確認するのも一案だ。


2018/12/30付 日本経済新聞社より