【シドニー=高橋香織】オーストラリアで住宅価格の高騰が続いている。人口増による住宅の需給逼迫に加え、中国からの投資が過去5年で約8倍に増えるなど、投資目的の購入が価格をつり上げている。豪政府は外国人を対象に不動産取得にかかる税金を増やすなど相次ぎ対策を実施。金融の不安定要素となりかねない住宅ブームの軟着陸を図ろうとしている。
毎週末開かれる中古物件の競売=フェアファクス・メディア

毎週末開かれる中古物件の競売=フェアファクス・メディア

 シドニー中心部から電車で20分のチャッツウッド。7月中旬の早朝、駅に近い3LDKの庭付き一戸建ての競売に120人が集まった。競売は中古物件の売買で最も一般的な方法だ。「さあ、いくらで買いますか」。開始から13分後、電話先の顧客と中国語で話していたアジア系女性が194万5千豪ドル(約1億7千万円)で落札した。

 「想定額より10万豪ドル高かった」と仲介業者はほくほく顔だ。同物件は2000年に約53万豪ドル、12年には約100万豪ドルで売却され、倍々ゲームで値上がりした。

 豪州は気候や教育環境の良さに引かれて流入する移民が多く、住宅需要を押し上げている。ここ数年の金利低下も手伝い、都市部の中古物件の価格はうなぎ登りだ。統計局によると、シドニーの住宅価格指数は過去5年で約70%上昇した。

 一因は中国マネーだ。15年7月~16年6月に豪外国投資審査委員会(FIRB)が認可した中国からの不動産への投資額(商業用を含む)は319億豪ドルに上り、5年前の7.6倍に膨らんだ。ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)によると、今年4~6月期にメルボルンで販売された新築物件の20.8%を外国人が購入。8割を中国人が占めたもようだ。

 住宅ブームに伴う旺盛な建設需要は、資源ブーム終息で生じた経済活動の空白を埋めた。一方で、価格高騰により一般市民は手ごろな価格の住宅を探すのが難しくなるなど、ひずみも目立つ。

 「ハウマッチ?」。メルボルンの日本人駐在員は中国人男性の突然の自宅訪問に面食らった。スーツケースを指さし「カネならある」と片言の英語を繰り返す。「社宅なので」と断ると、男性は無言のまま隣の家に行き、再びベルを押した。

 外国人の違法な住宅購入も目立ち、豪政府は対策に乗り出した。モリソン財務相は16年9月、FIRBの認可なしに計16件の住宅を購入したマレーシアや中国、カナダなどの所有者に売却を命じた。売却命令は13年以降、計46件に上る。

 外国人の需要抑制策も進む。ニューサウスウェールズ州は7月、外国人が住宅を購入する際の印紙税を4%から8%に引き上げた。さらに外国人が保有する宅地の固定資産税は来年、0.75%から2%に増税する。5月には連邦政府が50戸以上のアパート開発で、外国人の所有率の上限を50%とする規制を導入した。

 金融当局は3月、投資向け不動産融資の伸びに上限を設けるよう銀行に指導した。豪州の四大銀行は国内に収入源を持たない外国人への住宅ローンから撤退しつつある。

 こうした規制が住宅市場の先高観を後退させ、NABの住宅市場信頼感指数は4~6月期にプラス14と、1~3月期のプラス31から低下。NABは「住宅市場の成長は冷却期間に入った」として、17年の主要都市の戸建て価格上昇率を5%と予測。16年の11.6%から減速するとみる。住宅ブームは26年間続く豪州の景気拡大を支える柱の一つ。住宅価格の急激な抑制は、消費を冷え込ませる恐れもはらむ

2017/8/16 0:02 日本経済新聞社