銀行で住宅ローンを組もうとすると最近よく「疾病保障」を付加するように勧められます。「疾病保障付き住宅ローン」と呼ばれる商品です。どんな仕組みで、必要性はどれだけあるのでしょうか。
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 住宅ローンを組むときは一般に団体信用生命保険(団信)に加入します。返済期間中に万一死亡すれば、残債と同額の保険金が下りてローンが完済されます。この団信に上乗せする形で付加するのが疾病保障です。特定の病気になると返済を免除されたり一時金が払われたりします。

 国内では「2001年にがんを対象に保障を提供したがん団信が始まり」(保険を引き受けるカーディフ生命保険)といいます。保障範囲はどんどん広がってきました。脳卒中などを加えた三大疾病、糖尿病などの生活習慣病を含む八大疾病へと拡大。最近は日常的な病気やケガまで保障するタイプもあります。

 要介護者を想定した商品も登場します。10月、住宅金融支援機構が提供する長期固定ローン「フラット35」に付く疾病保障(3大疾病付機構団信)の内容が刷新。公的介護保険制度の「要介護2」以上に認定されたときにも保障されるようになります。

 金融機関が疾病保障付き商品を競って扱うのは、本体の住宅ローンの金利が大きく下がったのが背景です。金利の引き下げ余地が狭まり、代わりに、付加する保障をアピールして契約を増やそうとしています。

 ただし、商品性ではわかりにくい面が目立ってきました。特に複雑なのが保険金支払いの条件です。01年登場のカーディフのがん団信は、がんと診断されれば原則、ローン残債はゼロとなりました。ところが、その後に出てきた他の疾病までカバーする商品では、働けない状態が一定期間続くことを条件にするなど、基準が厳しいものが多くなっています。

 すぐには残債がゼロとはならない商品もあります。一定期間、月々の返済を肩代わりし、長引いた場合にはじめて残債を一括保障するという2段階の仕組みです。

 ファイナンシャルプランナーの高田晶子さんは「8疾病保障などと名称が同じでも金融機関ごとに条件はかなり違う」と指摘します。「まずはがん保障についての条件を確認して比べるといい」と助言します。がん保障は、診断確定だけでいいのか、就業不能期間も条件になっているのか、初心者でも見分けやすいといいます。

 そもそも疾病保障が自分に必要なのかどうかを考える必要もあります。高田さんは「保障内容の充実で利用するメリットは増しているが、働き方など、個々の事情により必要性は変わる」と話します。

 サラリーマンの場合、たとえ働けなくなっても短期間であれば、勤め先の制度や雇用保険により一定の収入を確保できます。配偶者が働いていれば、ローンをまったく返済できないというリスクは低くなるでしょう。

 疾病保障付き住宅ローンでは、保険料に回るコストはローン金利に含まれるなど契約者が負担するのが通常です。費用対効果もよく見極めて必要性を考えたいところです。

2017/8/12付

日本経済新聞 朝刊