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タグ:高所平気症

子どもがマンションなどのベランダから転落する事故が後を絶たない。

命にかかわる事故がなぜなくならないのか。

原因や対策を探った。

 

東京都内の44階建てマンションの31階に住む女性(40)は、4歳の息子がベランダに1人で子供用のいすを持ち出していて、ヒヤリとしたことがある。

「外が見たいとよく言っていた。気づくのが遅かったら危なかったかもしれない」

 

転落事故は各地で起きており、2015年11月には、横浜市内のマンション6階のベランダから5歳児が転落し、重傷を負った。

同年5月には福岡県内で、マンション12階から3歳児が転落、死亡した。

母親はゴミだしで外にいたという。

こどもの転落事故防止
 

東京消防庁によると、11~14年に東京都内で12歳以下の子供の136人がベランダや窓から転落し、救急搬送された。

消費社長は注意を呼びかけ、消防や消費生活センターからの事故情報をホームページに公開している。

 

ベランダの構造に問題はないのか。

国は建築基準法に基づき、2階以上のバルコニーには安産上高さ110センチ以上の柵などを設けるように定めている。

また、住宅品質確保促進法に基づく優良な住宅の評価基準では、手すりの設置は、足がかりとなる部分が高さ30センチ以上65センチ未満の場合、そこから80センチ以上の高さにするとしている。

 

日本大学教授の八藤後猛さん(建築安全計画)は「柵の高さが110センチあっても安心できない。足がかりがあれば簡単に柵を乗り越えられる」と指摘する。

 

屋東吾さんが4~6歳児90人に行った実験では、身長105センチ以上の5,6歳児は、エアコンの室外機ほどの高さ70センチの台に登ることができた。

高さ20~30センチの台に乗れば、110センチの柵の上に身を乗り出せることもわかった。

「子供は体に対し、頭が大きく、柵から外を覗き込んだだけで落ちてしまう。室外機と柵が近いと柵に飛び移ることもできる。4歳以下でモダンや物に自分で登れるようになれば注意が必要だ」。

 

格子状や横に桟がある柵、コンクリート腰壁の上にある柵だとよじ登りやすいという問題もある。

 

ベランダの使い方も注意したい。

日本技術士会「子どもの安全研究グループ」の技術市、森山哲さんは「くつろぎの場として机やいすを置く人が増えている。子どもにとっては危険だ」と警鐘を鳴らす。

プランターなどの踏み台となるものを置かない、ベランダに続く窓の子供の手の届かない位置に補助錠を追加することなどが対策になる。

 

一方福島学院大学教授の織田正昭さん(母子保健学)は「高層住宅が増え、子供が高所を怖がらない『高所平気症』になっているのも要因の一つではないか」と話す。

幼少から高層階に住み、地上からエレベーターで一気に移動する生活を続けると、高さを把握する感覚の発達の遅れや麻痺につながるという。

「ジャングルジムで遊ぶなどして、自分のいる高さなどを把握させたり、高所の危険性を学ばせたりすることが大切です」

 

対策に乗り出す開発業者もある。

大京(東京)は12年に独自の安全基準を設け、エアコンの室外機と柵を60センチ以上離している。

60センチ以上離せない場合は、室外機を壁からつるすなどしている。

 

子どもの事故防止を研究する産業技術総合研究所の西田佳史さんは「柵によじ登る足がかりとなる部分について、子どもが乗り越えにくい柵など安全優先のバルコニーを設計することが必要だ」と話す。

 

 

読売新聞(谷本陽子氏):平成28126()

産経新聞のTOPICS

【マンション生活に警鐘:「高所平気症」の子供が増加】

ベランダから子供が転落し、命を落とす事故が後を絶たない。

マンションで生活する子育て世帯の増加により、幼少期から高い場所で生活していて高所に恐怖心を抱かない「高所平気症」の子供も増えており、専門家は「興味のあるものがベランダの外にあれば、どんな恐ろしい行動でも取れるのが子供の特性だ」と警鐘を鳴らしている。(中井なつみ)

 

■親を探そうとして…

 

 東京消防庁によると、同庁管内で発生した乳幼児の高所からの転落事故は、平成23~25年の間に65件発生。そのうち、56人が重症以上と診断されている。

今年7月にも、東京都渋谷区のマンション1階にあるコンビニへ母親が出かけている途中、そのマンションの12階で留守番をしていた女児(4)=当時=がベランダから転落死する事故が発生。

他にも、26年5月には、葛飾区のマンション10階のベランダから、4歳の男児が転落して死亡。

このケースでも、母親は兄弟に忘れ物を届けるために1階に外出しており、部屋には男児と妹だけが残っていた。

 

 このように、ベランダからの転落事故の多くは「子供だけが室内に残っているとき」に発生していると考えられ、専門家も「子供は、親がいなくなった不安に耐えられず、何とかして親を探そうとする。

外に親がいると分かれば、ベランダからのぞきたくなってしまう」と警告する。

 

■「高さ」の感覚育たず

 

 「高層マンションの一室などで育つことで、高いところが怖くないという『高所平気症』の子供が増えている」。

こう指摘するのは、福島学院大の織田正昭教授(福祉心理学)だ。

 

 織田教授によると、昭和60年代ごろから、高層マンションで子育てをする家族が増加。子供が高い場所が危険かどうかを判断する感覚は、4歳ごろまでに大人の約8割のレベルまで発達するが、この時期を高層階で過ごす子供も多くなった。

子供は、自分の目線の高さを基準に地面との距離を把握し、「高いかどうか」を判断する。

そのため、高層階の部屋では空に近い景色は見えても地面が見えないため、高い場所が怖いと思う感覚が育ちにくいのだという。

 

 織田教授は「高層階で暮らす子供は、意識的に地上で遊ぶ機会を取り入れてほしい」と話す。

滑り台やジャングルジムなど、地面が見える範囲でさまざまな高さの遊具などで遊ぶなどし、感覚をつかませることが重要だという。

 

■ベランダでカフェ気分

 

 都心部のマンションを中心に、限られた室内の居住スペースを少しでも有効活用しようと、ベランダを部屋の延長として利用する家庭も多くなっている。

ベランダにいすやテーブルセットなどを置き、自宅でカフェ気分を味わったり、晩酌をおしゃれに楽しむライフスタイルも提案されるようになった。

しかし、物を置くことが増える分、子供が転落するリスクが高まっているとの指摘もある。

 

 東京都板橋区の女性会社員(43)は、長女(4)が生まれたときからマンション10階の部屋に居住している。

ベランダからは富士山も見えるため、いすやテーブルを置き、気候のいい時期にはコーヒーなどを飲みながら外の景色を楽しんでいた。

長女も、雨などで外出できない時にはベランダで遊ぶことも多く、長い時間を過ごすことがごく当たり前の生活だったという。

 

 しかしある日、長女はベランダのいすの上に上り、手すりに手をかけて、地面の方をのぞきこんでいた。「ぞっとしました」。すぐにいすは片付けたというが、「こんな高いところから外を見ようとするなんて、思ってもいなかった」と振り返る。

 

 このように、子供は大人の想像がつかないような行動に出ることも多い。福祉の視点を生かしたまちづくりを研究する日本大理工学部の八藤後(やとうご)猛教授は、「子供の身体能力は、大人が思っている以上に発達していることを知ってほしい」と指摘する。

 

 八藤後教授らが都内の幼稚園児約90人を対象に行った調査によると、4~6歳の子供でも、高さ70センチほどの台には簡単に足をかけて上ることができたという。

現在、建築基準法ではベランダの手すりの高さを110センチ以上にすることが定められているが、もし高さ約70センチの物の上に子供が登った場合、体の大半が柵より上に出てしまうことになる。

また、ベランダにプランターなど20~30センチの“踏み台”になり得る物があれば、子供はそれを足がかりとし、ベランダの柵の上に身を乗り出すこともできる。

八藤後教授は「頭が大きい子供は、その重みで少し乗り出しただけでも転落する」と警告する。

 

 他にも、エアコンの室外機などは柵から離れたところに設置しておけば安全だと考えられがちだが、両者の距離が60センチ未満であれば、子供は室外機に登ったあと、簡単に柵まで飛び移ることができる。「子供は、まるで忍者のような動きができることを頭に入れておいてほしい」。

子供が部屋からベランダに1人で出られないよう、施錠を2重にするといった対策を徹底することが大切だ。

 

■構造的な問題も

 

 マンションの構造的な問題から、転落リスクが高くなっている物件もある。

 

 昭和40年代から50年代ごろにかけて都心部を中心に建設されたマンションには、ベランダの柵に唐草模様など凝った装飾が施されているものが多い。

こうしたデザインの柵では、子供が足をかける場所がたくさんある。

この場合は、半透明のアクリル板などで室内側からカバーするなどの対策が有効という。

一方、外が全く見えないような素材で目隠しをしてしまうと、かえって「外を見たい」という子供の好奇心を刺激し、ベランダの柵を登りたがることにも注意が必要だそうだ。

 

 また、子供の転落事故が相次いでいることを受け、独自に自社の物件の設計基準を見直した取り組みもある。

分譲マンションを手がける大京(東京都渋谷区)では、平成24年に「バルコニーの足掛りに対する安全対策」をまとめた。

(1)エアコンの室外機と柵の間を60センチ以上開けること

(2)室外機を置く場所を、高さ90センチ以上の柵で囲うこと

-などを定め、これ以降に設計した自社のマンションには、いずれかの整備を義務づけた。

同社品質管理課の片桐務担当課長は「転落対策を取れば、バルコニーの面積が狭くなることは事実。ただ、安全には変えられない」と力を込める。

八藤後教授も「安全を確保するためには、建築基準法での柵の高さの規制をより厳しくするなど、見直しが必要ではないか」と話している。

 

1020() 産経新聞より

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